ドゥンス・スコトゥスの存在の一義性について

こんにちは。naka6です。

この記事は実はオタク語りアドベントカレンダーの15日目の記事です。

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気づいたら16日目になってた。ウケる。(ウケている場合ではない。)他のオタクがセッセコ書いてくれている間に俺は一体何を...

まあとりあえずやっていきましょう。

 

最近、ドゥンス・スコトゥス(以下長いのでスコトゥスとします。)という中世の哲学者の「存在の一義性」という概念について勉強したので備忘録がてらまとめていきたいと思います。

 

「存在」についての中世における一般的な理解

スコトゥスの「存在の一義性」の哲学史上の意義を理解するためには、スコトゥス以前の「存在」についての解釈を頭に入れておく必要があります。それは「アナロギア」と呼ばれています。神と被造物(つまり木とか人間とかのことです。)にある言葉が述語付けられるとしましょう。例えば「神は存在する。」「naka6は存在する。」この二つの文に現れる「存在する」という言葉は同じ意味なのでしょうか?答えは同じ意味でもあるし、同じ意味ではないというものです。神が「存在する」のと人間が「存在する」というとき、当然意味は異なります。当然です。神と人間では格が違いますから。人間が存在する様な仕方で神が存在するということは考えられません。それと同時に全く完全に意味が異なるかといえばそうではありません。「存在する」ということに関して何かしらの共通点がなければ同じ述語は紐づかないでしょう。

こうして同じ意味(同名同義的)でもなく、全く異なる意味(同名異議的)でもない。神と被造物との同じ言葉による述語づけは三つ目の中間的なあり方で行われると考えられます。これが「類比的(アナロギア)」です。

このことについて述べた中世スコラ哲学の大家トマス・アクィナスの文章を見てみましょう。

神と被造物に関し、或る名が述定されることはありえない。実際、どんな被造物にも神に対して、その完全性を限定するような関係に立つことはないのであるから。しかし、もう一つの類比にあっては、或る名が類比的に共通であるA・B間に、いかなる限定的関係もありえない。したがって、この類比によれば、神と被造物について或る名が類比的に述定されても一向に差し支えない。

トマス・アクィナス『真理論』第二問題 哲学原典資料集 東京大学出版会 1993

 

この発想はアリストテレスに由来するものらしいです。

まさにこのように、物事は多くの意味である[存在する]と言われるが、そう言われるすべてのあるもの[存在する]は、或る一つの原理との関係において存在すると言われるのである。

アリストテレス形而上学』4巻第2章 出隆訳 岩波文庫 1959

スコトゥスの存在の一義性について

「存在」についてスコトゥス以前では上で見てきたような理解が一般的でした。しかしスコトゥスはこれに対して「神が存在する」、「naka6が存在する」における「存在する」を一義的な、つまり同じ意味で使われているということを主張したのです。むちゃくちゃ挑戦的な説です。中世において神は別格です。人間の理性では捉えられない、無限の最高の最善の*1存在でした。そんな神と被造物が同じ様に理解できるというのは驚くべき説です。

どのようにこれが導き出せるのでしょう。スコトゥスの論証を見ていきましょう。

  1. 確信している概念が一つある。そしてその他の疑う概念は確信している概念とは異なる。
  2. 神が存在していることは確信している。そして無限に存在しているのか、有限に存在しているのか、はたまた被造物的に存在しているのかそうではないのかは疑っている。
  3. 神へ述定される「存在している」は「無限に存在している」といった概念からは中立的な、一義的なものである。

この様に論証しています。

そしてこのように一義的であるからこそ我々は被造物から出発して、それらを超越した神を理解することができるのです。

終わりに

いかがだったでしょうか。僕自身も完全に理解しているわけではないので、興味のある人は原典をあたったりしてみてください。一応この記事を書くときに参考にした文献も書いておくので読めば大体同じことが書いてあるはずです。

さて明日(16日分)のアドカレ担当はもう投稿してくれています。いろいろな知見を得ることができておもしろかったです。香辛料ちゃんと使うと料理が高級になる感じがしますね。

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それではみなさんご機嫌よう。

参考文献

荻野弘之、山本芳久、大橋容一郎、本郷均、乘立雄輝『新しく学ぶ西洋哲学史ミネルヴァ書房2022

中川純男編『哲学の歴史3  神との対話中央公論社 2008

クラウス・リーゼンフーバー『中世思想史』平凡社 2003

山本巍、今井知正、宮本久雄、藤本隆志、門脇俊介野矢茂樹高橋哲哉『哲学原典資料集』

東京大学出版会 1993

 

*1:語彙力のないオタクみたい